X-GAMESのゴールドメダルを3回、2013年のX-Fighters大阪では日本人として初の優勝。その輝かしいまでの経歴を思わせないほど謙虚さ。世界で戦うTAKAが、長時間インタビューに答えてくれた。

(※本記事は本誌ダートスポーツ9月号にて掲載したものに加筆修正したものです)

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「昨年の大阪はトーマスに負けてた」

DS:まずは今年のXファイターズ大阪を振り返ってみていかがですか?
TAKA:実は初開催の昨年よりも今年のほうが気合い入ってたんですよ。昨年は伸び悩みというか、どうしていいか、っていう時期で。これ以上は技のレベルがどんどん上がって、もっと危なくなっていく。ホンマにやっていいんか、それとも成長を落としていいんか、って悩んでて…。だから昨年は表彰台も狙わず自分のベストで走ろう、って思ってたんですよね。たまたま運良く優勝できましたけど、僕としては2位でした。トーマスに負けていたと思います。地元だからってこともあったと思うんですよね。それが僕としては嬉しいけど、気に食わないとこもあって(笑)。これ、ホンマにね〜、自分で分かるんですよね。「今回こいつには負けた」とか。だから今年の大阪とX-GAMESではひと皮むけたいってのがずっとあったんです。でも怖い部分もあってずっと自分との戦い。だけど「これが最後、引退する前に成長したい」と思って。

DS:それで新技に?
TAKA:そうです。最初はミニフリップから。2月くらいに挑戦して、一回目から成功してすぐできるようになって、もうすぐに土でチャレンジしたんですけど、これ、23mのランプで初めてやったときよりコワイんですよ(笑)。回転も速いし途中で修正が効かないんで、KAESHI(カリフォルニアロール)より怖い。X-GAMESのオースティンでは練習で2回ぶっ飛びました。バイクのセッティングが合ってないのは分かってたんですけど、時間もなくて、ボワって合わせるはずがボウォロボロベロって…真っ逆さま(笑)。X-GAMESね〜…。ずっと緊張してたのに強風で中止になって。もう、ずっっっっとすよ、緊張!

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「クオリファイ? なんや、それ!」

TAKA:大阪とX-GAMESで何ヶ月も緊張しっぱなし…。正直、この2つで「よっしゃ、勝った」で終わらせたかったんですよね。もうそのあとは今ある技を組み合わせたりしながら続けていければいいなって思ってました。楽しんで乗ろうと。でも大阪は練習で足をケガして、せっかく練習してきた新ワザを見せずに帰ることだけはしたくなかったから、日曜日なんとか飛んだけど、プレッシャーに負けたのが超くやしいですね。ロックソリッドを決めようと思ったら回転足りなくて、とっさにノーハンドにしましたけど。「うわー、負けたー」って。だからそのあとのX-GAMESの前までは、ミスなしでできるようにメンタル的にも鍛えて、ちょっと風が吹いても「この技」って決めたら全部できるように練習しましたね。マドリッドでは自分の走りを全部見せれたんでスッキリしてるんですけど…。まあまだ辞めるなってことなんですかね(笑)。でも周りのケガとかエイゴさんのこともあるし、引き際が大事なのかなとか、どうしても考えてしまいますよね。

DS:最近の日本人の若手FMXライダー達はどうですか?
TAKA:いいすよ。いいすけど、例えばGENKIなんかは3年くらい前から、お前早く海外に行けって言ってて。その時は若くて気づかなかったことも今やっと気づいてきて、ついてこれるように頑張って練習してると思います。でももうちょっと若い16〜17歳くらいの子が現れてほしいですね。ちょっと前のリーバイみたいな。

DS:今はTAKAという前例がありますが、当時は何も前例がない状態で渡米したわけですよね?
TAKA:そうですね。俺、「予選」の英語も知らなかったんですよ。クオリファイ? なんやそれ! って。え、今からかい! みたいな(笑)。学校の授業も寝てたんすよ。どうせ日本から出えへんしって思ってて。1時間目寝てて、2時間目起きたらもうついていかれんくて。最初アメリカ来た時も、なんも喋れないんすよね。全部ジェスチャーです。トゥイッチに「お前カッコイイ走りしてんなー」って。でもそんときは何言ってるのかも分からないんすよ、こっちは。帰ってルームメイトに聞いたら「お前、それ褒められてるよ」って。「ヨッシャ! トゥイッチに褒められた!」ってガッツポーズ(笑)。そういう状態でした。電話が特に難しかったですよね。時間とか場所とか。全部が未知。完全に迷子。誰が誰かも分からないし、メカもいないし、コンテストの流れ、ミーティングされても内容が分からない。まあでも、英語喋れなくてもね、なんとかなりますよ。

vol.2へ続く。

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東野貴行
TAKA HIGASHINO
1985年3月13日生まれ(29歳)/大阪府出身
2010 Dew Tour ゴールド/Red Bull XRAY ゴールド/ X-GAMES Best Trick ブロンズ
2012 X-GAMES Best Trick シルバー/ X-GAMES Freestyle ゴールド
2013 X-GAMESブラジル Freestyle ゴールド/X-GAMESロス Freestyle ゴールド/ X-Fighters OSAKA 優勝

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