今年の全日本エンデューロ選主権第4戦では、驚くべきマシンが最高峰クラスIAで優勝しました。鈴木健二のモディファイした、WR250Rです。過去、ISDEにもチャレンジしたことのある鈴木健二×WR250Rの組み合わせですが、ある意味で今できる最高のエンデューロモディファイを施した、と言えるでしょう。

wr-1

WR250Rが
レーサーに勝てるものか

鈴木健二とWR250Rの関係は、非常に深いものがある。2007年のWR250Rのデビュー時から、鈴木はWR250Rで数々のレースに参戦。国内では、その頃ライバル不在であったことから、トレールでありながら栄光を欲しいがままにしてきた。
これまでの最大のレースと言えば、2007年のISDEチリだろう。鈴木にとっても、2006年ニュージーランド大会で負傷してしまいリタイアした苦い経験を持っていて、リベンジに賭けたい意気込みもあった。また、日本を代表するワールドトロフィーチームのエースとしての参加でもあり、そんな絶対の舞台にWR250Rを選んだことが、鈴木のWR250Rに対するポテンシャルの高さ、信頼度の高さを表しているといっても過言では無いはずだ。

今回のWR250Rは、決して公道での走行をスポイルする方向ではなくツーリングのような最高のルートも楽しむことができる

今回のWR250Rは、決して公道での走行をスポイルする方向ではなくツーリングのような最高のルートも楽しむことができる

ISDEでは、過酷だったチリだからこそ、完走とシルバーメダルにつながったと鈴木は考えている。だが、しかし鈴木自身もWR250Rがトレールでありレーサーを超えられないことは、充分に承知してることでもある。実力が拮抗しているライバルと勝負するとなれば、WR250Rでレーサーに挑むことは、無謀であることに疑いの余地はない。鈴木からすれば、今シーズンはすでにポイントを落としていることもあるし、公道を使った競技で走れる手持ちのバイクがWR250R以外になかったこともWR250Rで参戦した理由だ。ただ、やるからにはあっと言わせたい、WR250Rのポテンシャルをできる限り引き出してやりたいと考えた。そこで、これまでの鈴木のノウハウを詰め込んだ、現時点でのWR250Rエンデューロ仕様「最終形態」を製作することになったのだった。
だから、鈴木としては「まぁ、トレール車ですから勝てるとは思っていません」と事前から話していたし、周囲としても勝負になるとは思っていなかった。
会場の日高周辺は、レース前日から雨が降り続けていた。

雨によって強烈なマディになったテスト「町営牧場」では、WRの特性が本領発揮。低速の扱いやすさで前に前にと進む

雨によって強烈なマディになったテスト「町営牧場」では、WRの特性が本領発揮。低速の扱いやすさで前に前にと進む

キレた鈴木健二

だが大方の予想を裏切って、全日本エンデューロ選手権第3戦にあたるHTDE1日目では、一番時計を出してきた。本人も「何度かミスをしているし、1位になれるとは思っていない」と話す。挙げ句の果てには崖落ちを喫して大きくタイムを落としてしまった。結果は、最大のライバル釘村忠(CRF250R)が、難なく優勝を手にしており、鈴木もそれには納得。夜の食事では、一番時計を出せたことを素直に喜んでいた。

ISDE参戦時と同様だが、マシンの耐久性は非常に高いものがあった。2日目の朝には、念のためクラッチプレートを交換して備えた

ISDE参戦時と同様だが、マシンの耐久性は非常に高いものがあった。2日目の朝には、念のためクラッチプレートを交換して備えた

同選手権の第4戦にあたる、HTDE2日目。コンディションは1日目よりも悪化しているような厳しい状況のなかで、鈴木は果敢にアタックし続ける。わずかなことがミスを誘い、体力とリザルトを奪っていくオンタイムエンデューロの緊張感のなかで、攻め続けることは非常に難しいが、一番時計を出せたこともおそらく鈴木の自信につながっていったのだろう、2日目は6つのテスト中2つのテストで1番時計を奪うことになり、なんと優勝してしまったのである。3/4ラウンドの総合では、釘村に優勝を譲ったものの、単独のラウンドとしてはWR250Rに金星。また、釘村が参加しなかった3日目(全日本エンデューロ選手権には加算されない)を含めた、HTDE総合結果でも優勝ということに。

wr-7

次回はいよいよ、鈴木健二車の徹底解剖に迫ります!

その2はコチラ。

Follow me!

Tagged with: