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今年のAXCRは初めてダートスポーツとしてチームを結成しました。
ヤマハのエンジニア西森裕一選手は、JNCCなどに参加している方にはおなじみのAAライダー。
アフリカを舞台に繰り広げられるハードエンデューロ『ルーフオブアフリカ』への参戦は、本誌でもレポートしたことが記憶に新しいと思います。
そんな彼をお誘いしたのが、今年の冬。新しい挑戦を求めていた西森選手に、宮崎が猛烈にお誘いしました(笑)。
「AXCRに行って良かったと、絶対に思うはずです。この面白さ、他では経験できないですよ」と。
ラリー経験は皆無なので、事前にTBIに参加して、流れを掴み、AXCRへ。ですが、アジアの常識は日本の常識ではない!?
初日にして「もう帰りたい、、」と猛者を悩ませましたが、次第に流れと楽しみ方を覚え、最後はSSトップへ。
AXCRの魅力を体感し、得た言葉の重さがあります。
読み応えありますので、ぜひ魅力を感じ取っていただければと思います。
ASIA CROSS COUNTRY RALLY 2019へ参戦して来ました。自身初のアジア圏への渡航、国内を含めても 2 回目のラリーレースのた
めまだまだ慣れない部分も多かったのですが、今回は「 DIRTSPORTS RT with Team Japan 」のメンバーとして参加させていただけたおかげで、サポート体制やレース中の細かなことまで全く不安無くラリーに集中することが出来ました。
24回目を迎えるアジア最大のラリー 2019 年大会はタイ王国のパタヤからスタート、 6 日間で約 2200km を走破してミャンマー連邦共和国の首都ネピドーでフィニッシュします。レース中の国境越えや、 8 月は雨季となるため増水による水没の心配もあるとの事前情報もあり 、冒険 にでも行くかのような期待と不安の入り混じるレースでした。
今期活動のメインとして準備も進めて来ましたが、少し残念だった点としては車両が手持ちの WR250F となってしまったことです。レース内容やコース設定も考えるとハイパワーな 450 ㏄がベストと思われますがそこまでの準備には至りませんでした。
とは言え事前の車両整備はしっかり行ったので最大限のパフォーマンスを出してくれたと思います。大きなトラブルも無く最後まで走り切りました。
最悪の可能性として水没も想定した携帯ツール類はいつもより多 めになりました。ツールはリアフェンダーに取り付けたバッグに入れて 走りましたが気になる重さも無かったので今後はこの内容にす るつもりです。
その他いつものファーストエイドキットに今回はポイズンリムーバーを追加 しました。虫刺されやヒルに噛まれる場合もあるとのことで準備し ましたが一度も使うことはなく済んだので良かったです。
Roof of Africa のような ハードエンデューロではないのでエナジー補給は 途中のサービスピットでの補給を メインとして高カロリー を持って走るこ と は不要でした 。もしもの遭難も少しだけ想定してチョコバー等を バックパックに入れておきました。コースのまわりで全く人や民家が 無くなるエリアは多くないため不要かも知れませんが 1 度遭難を 経験すると心配性になるのでしょうか。
(編集部注:少量高カロリーのかりんとうを持参してました。今後真似させてもらいます)
今回日本から現地までは 1 人での移動となりました。チーム のメンバーともパタヤのオフィシャルホテルで合流します。
せっかく なので途中のバンコクで 1 泊、パタヤに入ってからも別のホテル で 1 泊してリゾート気分を満喫しました。しっかりとリフレッシュし てレースに集中するつもりでしたが、なかなか旅行気分から 切り替えできずに苦労しました。慣れないことはしない方 が良さそうです ね 笑
オフィシャルホテルに着くと駐車場がパドックとなっていてすでに各チームのテントが並んでいました。
まずは 1 ヵ月前に送り 出していたマシンと部品を受取ります。特に問題なく到着していたので一安心です。軽く点検と整備を行って受け 付けと車検を済ませます。余裕のあるうちにガソリンスタンドに給油に行きながらラリーメーターの動作確認もしておきま した。
マシンは問題なし。あとはスタートを待つのみです。
イベント開始前夜には大会スポンサーであるサンクロレラ主催の Welcome Party に招待いただきました。
生演奏のゆった りとした雰囲気の中で各チームの紹介もあります。お揃いのチームシャツで壇上に上がりました。
実はほとんどのチーム 員とは面識もない状態で参加させていただいたので、このパーティーでこれから一緒に旅をするチームメンバーとも親 睦を深めるきっかけになりました。
大会イベント初日となる8 月 10 日 LEG 0 はビーチリゾートの街パタヤでのパレード走行から始まります。ビーチ沿いは人も多く、特にパレードの中心となる Walking street は賑わいも凄くパワー溢れる街でした。
1 人ずつ名前を呼ばれて繁華街の中を走って行きます。気持ち的にも一気にレースモードに突入します。次の日は早朝からラリーのスタートです。
8 月 11 日 LEG 1 いよいよラリーのスタートです。ホテルからスタートする ので四国 TBI のように テントをたたんだりする 必要も無く 、 朝 の 準備は余裕を持ってできました。チームのサポートカーもいるので 何か不具合が起きても中間サービスエリアまで行けばなんとか なるという安心感もあります 。
海外レースという気負いもあまり なく、 6 日間のラリー を スタートしました。
AXCR ではまず 100 ㎞前後のリエゾンを走り SS スタートポイントに到着 します。
時間になったら 1 人ずつ SS スタート して行き前半 SS 約 100 ㎞、中間サービスエリアを挟んで後半 SS も約 100 ㎞、最後にリエゾン 100 ㎞ほどを走ってその日のホテルに到着します。
日によって距 離の違いはありますが基本的にはほぼ同様のパターンでした。
ルートはコマ図を頼りに進んで行きます。ラリーメーターの距離とコマ 図に書かれた情報、それらを実際の地形と照らし合わせて 判断するのですが、これがなかなか難しいのです。
特にコマ図に書かれた曲がり角や横道がどれを指すのか? 市街地はまだいいのですが森の中に入ってしまうと全くコマ 図についていけずに 1 日に数回は迷ってしまいました。 タイヤの跡をトレースしても前のライダーの迷った跡だったりもする ので、やはり自分を信じて確実に 進むしかない ようです。
当 然走るペースも落ちてしまうのですが現状のスキルでは仕方あ りません 。このコマ図読みが今後 の大きな課題となりました。
今回の車両装備としては ICO ラリーメーターを 1 つ追加してラリーメーター 2 個使いとしました。メインメーターでコマ図の距離を見てサブメーターを 燃料航続距離確認とするか、それともコマ図からコマ図の区間距 離を確認するか等と色々考えていましたが、なんとレース初日に 片方のメーターが動かなくなってしまいました。原因はおそらくセン サーの不良ですが距離表示が止まったままで全く役に立たない 状態です。ラリーメーター 2 個使いとしていて助かりました。
やはりど んな不具合が起きるかわからないのでメーターは 2 つ使ってセンサー もそれぞれ別にすることが確実に完走するための基本セットアッ プとなりそうです。
ラリーレース参戦 2 回目の初心者ですが 5 月に走った 四国 TBI も 6 日間だったのである程度の経験値は あるつもりでした。しかし今回の AXCR で 1 番うまく いかなった点が長距離 SS への 対応でした。毎回 気合を入れてスタートするのですが、 SS の距離も時 間 もかなり 長かったので集中力の維持が出来ず にペースを下げてしまうことが多かったです。
特に速度制限のある村の中を走ったり、森の中 でルートを見失って皆で迷ったりしているとレースモー ドが切れてしまってその後の走りにも大きく影響し ました。
特にタイでの前半 3 日間は 1 日の中でのペー スをつかむのに苦労しました。
(チームサポートの大崎さんはHusqvarna東名横浜の店長。ヤマハエンジニアの西森選手との連携プレイ。メーカーを超えた絆が生まれます)
また、ロードマップが長すぎて1日分が入り切らないため に中間サービスエリアで巻きなおす必要があったのですが、 決められた作業時間が 短くて移動 時間も入れると実質 数分ほどしかありません。
次のスタート時間に間に合わ ずにペナルティを加算されてしまってガッカリします。 3 日目 LEG 3 では SS タイムは 4 番手のはずがこのペナルティ が加算されて 10 位の結果でした。リザルトを確認すると 他のライダーはペナルティ加算されていない ので 「 マップ 巻き のスピード も必要か 」 と 気づいてからは必死で巻いてな んとかペナルティ無しになりました。
当たり前ですが日本では考えられないような規模 とルート設定です。 「 こんなところを全開で走れたら いいのに」 というような場所を SS としてまさしく全開 で走ります。オフロードライダーには夢のような 6 日間と いえるでしょう。
地平線に向かって全開で走るというものとは違っ て、日常の中で爆走するイメージでしょうか。
SS 中で あっても完全に封鎖はされてないので他の車や バイクとすれ違う場面も多くあります。もちろん地元 の人を優先しながらも、全開 みたいな 笑 警察も出てますがラリー車はどんどん走らせます。
日常でありながら非常識が許される。不思議な感 覚でした。
ミャンマーへの国境越えから始まる 8 月 14 日 LEG 4 は雨による水害の影響があるとのことでまさかのレースキャンセル となりました。
この日は次のホテルまでレース関係者でコンボイ大移動です。国境での入出国手続きも大人数で混 乱状態でしたが問題なく通過。ミャンマーへ入国する橋の上で車線が交差して右側通行になります。
まずは 無事 に国境越え ができて一安心です。すぐに換金所に行きミャンマーチャットを手に入れておきます。
その後の移動路では完全に浸水状態で深い所では水没 しそうな場面もありました 。 「この ラリーで一番緊張した 」 と の声も多かったです。たしかにレースどころではなさそうな状 況です。大型トラック等は動けずに大渋滞となっていました。 主要道路のため地元の人たちの移動も大変そうです。
LEG 5 以降のレースも出来ないのでは?と心配しましたがサ ポートカーや関係者も無事通過することができたので残り 2 日 間は予定通りに開催することになりました。気を取り直して レース の 準備 をしてミャンマーパートに臨みます。
8 月 15 日 LEG 5 ミャンマーでの最初の SS はモン族の村を通る 23 ㎞のターマック ! でした。若干湿った部分もあって滑り やすそうなコンディションでしたが村の人たちが総出で応援してくれているので手を抜くわけにもいきません。
可能 な限りアクセルを開けて走りました 徐々 に 1 日をまとめるペースもわかって来て、この日の順位は 5 位。少しずつ ですが上位に上がって来ました。
あっという間 の最終日 8 月 16 日 LEG 6 です。 SS のスタートポイントには大勢が観戦に来ていました 。この日前半の SS はハイウェイ横のダート路 で、その ほとんどが直線というレイアウトをひたすら全開です 。メーター 読み 140 ㎞ /h で走り 切って 3 番手のタイムでした。
大排気量車もいる中で 250 ㏄での結果としては十分満足なものでした。 SS ゴールするといきなりトラックに載せられての移動です。コマ図には書かれてなかったので少し焦りました が次 の SS スタートポイントまで運んでくれました。
そして大会最終の SS 。 コンディション の悪いエリアがカットされてか なり短め の 15km とい う 距離 設定となっていました。しかもアッ プダウンとガレ た 路面もあったり と、日本 のクロスカントリーで走り慣 れた コンディションに近かったので 「ココ で行くしかない 」 と 気合を 入れて攻めました。
結果は嬉しい トップタイム ! この日の前半 SS と後半 SS のトータルタイムでもトップとなったので最終日 LEG 6 の 1 位を取りました !
6 日間の総合順位では目立つものではなかったのです が 1 日 だけでも 1 位を取れたので少しは目立つ結果を残せたかと思 います。
ラリー中のもう一つの楽しみがその時に一緒にいたライダーとの食事でしょうか。
ローカルの食堂を見つけて食べる のですが、全てが美味しかったです ! しかも安い !
レースが終わったあとは超巨大な政府施設での表彰 パーティーでし た 。
個人成績は MOTO 総合 11 位で入賞は 出来ませんでしたが、チーム成績は 3 位の結果でした。
初めての AXCR で したが、次から次へと色々な出来事があって非常に充実した 6 日間でした。
単にスピードを 競うレースと捉えて いたら楽しめなかったかも 知れません。実際初日の自分がそうでした。 SS の中でタイム を 競って いるはずなのにペースを落とさなければならない 状況があることに 戸惑いました。
コースの変更や予定にない移動、ルート途中での洗車や食事、森で迷った時にも嫌にならずに全てを楽しんで こそ AXCR と感じました。そうすることでペースを保ちレース感も落とさない走りにつながり結果もついて来ると思 います。
何よりもこの大会を楽しんで走り切るマインドを今回つかめた気がします。それだけ でもこのラリーに参 加 して良かったと思えるほど の満足感があります。
今後の予定 は全く決まってませんが、また出てみたいと思える魅力ある大会でした。
応援、サポートいただきありがとうございました。
写真提供:AXCR
この記事の著者について
- キース宮崎
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