ベストバランスの300EXCと350EXC-F。ルーフオブアフリカのレース本編では2スト300ccが圧倒的メジャーだが、今作では250EXCでも十分に満足できるほどの完成度の高さ

ルーフオブアフリカの難コースに挑む、国際試乗会からインプレッションをお届けします

世界的にその動向が注目されるKTMのエンデューロシリーズに、新作がデビュー。特に今年は噂通りの2ストロークTBI化が気になるところ。国際試乗会から先んじてレビューをお届けしよう

PHOTO/KTM
TEXT/M.Inagaki 稲垣正倫
RIDER/R.Uchijima 内嶋亮

 

150/250/300EXC
新生TBIは限りなくキャブに近い!

全機種とも、フューエルインジェクションをTPIからTBIへと方式変更した新世代の2ストロークエンジンが搭載されている。スロットルボディやインジェクターは旧型と同じであるにも関わらず、電子制御の緻密さによって排ガス規制EURO5を満たし、さらにフィーリングを向上している。最少排気量は150ccで(モトクロスシリーズは125cc)、より豊かな低速トルクと扱いやすさを求めたエントリーモデルに仕上がっている

完成度を高めたシャシーに
最高に乗りやすいエンジン

2024モデルのシャシーは、全モデル共通で旧作との共通部品がわずか5%に過ぎないほど大幅に刷新され、特に剛性が飛躍的に向上していることが特徴だ。内嶋はこの新しいシャシーについて、「ステップに乗ってさえいれば、しっかりリアタイヤが潰れてくれてトラクションを生み出してくれることに驚きました。ライダーの入力に対してしっかりマシンが応えてくれるので、今まで何をやってもトラクションを感じられなかったようなスキルの足りない人でも、ちゃんとわかるんじゃないでしょうか」と絶賛している。

サスペンションはクローズドカートリッジ式に進化。またブラケットが新型になったことで真円に近い形で締め付けトルクをかけられるようになり、スムーズなストロークを実現している

 

 

様々なシチュエーションを走るエンデューロ、クロスカントリーでは、前後伸圧すべてを手で変更できるサスペンションアジャスターがとても便利だ

 

 

サスペンションは旧型XPLORシリーズから新型XACTシリーズに進化した。これまでの左右分割式からクローズドカートリッジ式へ。ディメンションはフロントのストロークが延長、リアのストロークが短縮されており「リアタイヤに積極的に乗るようなスタイルに向いています。リアが跳ね上げられたときにフロントへ荷重がかかりづらくなるのです。そのあたりが僕がこの姿勢を好む理由なのですが、新型はまさにそういう車体ディメンションになっています。旧型は大きな入力によってボトムまで一気に入ってしまうようなことも多かったのですが、新型はハイドロストップ機構によってしっかり腰があり、そのような動きを感じたことはありませんでした。ギャップに心置きなく突っ込んでいける仕上がりでしたね」と述べ、サスペンションの進化に感銘を受けているようだった。

さて個別に見てみよう。2024モデルでは2ストロークの250EXCと300EXCが大きな注目を集めている。FIにはTBI方式を採用し、スロットルボディにデュアルインジェクターを搭載。燃料噴射、排気バルブ、点火時期をECUが一元管理する。
内嶋は「2021モデルの250EXC TPIは完成の域に達していましたね」と振り返りつつ、「しかし、新しいTBI方式の2024モデルは更なる進化を遂げていました。おそろしく扱いやすい。ビギナーにも扱える。スロットルの開け口がとてもスムーズです。250の完成度が高すぎて、300EXCの必要があるのかと思うほどに良かったです」と絶賛する。

TBI(スロットルボディインジェクション)に変更された新世代の2ストロークエンジン。いよいよすべての排気量がセルスタートオンリーになり、キックスターターを想定しないクランクケースになった。デビュー間もなく開催されたエルズベルグロデオでも新型300EXCが優勝している

先行して発表されたモトクロッサーSXでは混合給油式だったが、EXCでは旧型に引き続き分離給油式を採用。エミッションコントロールに有利であるだけでなく、公道マシンとしての利便性を確保している

 

250/350/450/500 EXC-F
優れたドライバビリティ

250/350はエンジンの設計が刷新され、よりコンパクト化が推し進められた。昨年フルモデルチェンジを先行したSXシリーズとはボア×ストローク比、圧縮比を異にする専用設計になっている。車体の変更とエンジン自体の重心位置が変更されたことによってライディングフィールも非常に軽く、450/500においても扱いやすさが向上されている。クイックシフターや新世代のトラクションコントロールを搭載したことも大きな特徴だ

 

4ストロークモデルについては250/350EXC-Fがコンパクト化をさらに推し進めた形だ。ボアを拡大し、ショートストローク化を進めてエンジンの高さを抑えたことで、ライディングフィールにも好影響を与えている。「250EXC-Fは、前モデルの扱いやすさをさらに向上させている。全てがマイルドで、ライダーがどれだけミスをしても許容範囲内に収まるんですよ。350EXC-Fはパワフルでバランスが良い。トルク感もしっかりとしており250EXC-Fでは難しい部分でも力強く走れますね。驚きは500EXC-Fです。以前の大排気量モデルはトルク変動が激しかったですが、今回のモデルはスムーズ。細かいコーナーでも安定して走ることができて、エンデューロでも使いやすいほどに対応レンジが広くなっています」と感動を隠せない。

ショートストローク化だけでなくギヤまわりの再設計やシリンダーヘッドをブラッシュアップしたことで、旧作よりもコンパクトなエンジンを目指した4ストロークモデル

試乗会はKTM本社の意向により南アフリカのレソト王国にてルーフオブアフリカのコースを使っておこなわれた。難易度は高く、80km/h以上で飛ばせる区間もあり、求められる性能は幅広い。まさに開発陣の自信の高さを体現した試乗会であった。

 

 

KTM JAPANウェブサイト
https://www.ktm.com/ja-jp.html

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