6月1日、いよいよ最後のエルズベルグを迎える田中太一。まずは、本誌で掲載してきた田中太一に関する記事を、振り返ってみましょう。まず一発目は、2011年のエルズベルグレポートより。

2011年、エルズベルグから帰ってきた田中太一を、新宿の公園でロケ

2011年、エルズベルグから帰ってきた田中太一を、新宿の公園でロケ

 世界一過酷なエンデューロであるエルズベルグロデオが6月23〜26日に開催。会場は、オーストリアのアイゼンナーツ。鉱山の町を舞台に繰り広げられるエクストリームエンデューロの代名詞で、そのメインイベントであるレッドブル・ヘアスクランブルは、なんとプロローグ(予選レースで、ハイスピードセクションが用意される)で1500人を超えるライダーを集める。
 500人の予選通過者を決めるため、エルズベルグのプロローグは2日間にわたって開催される。毎年のようにこのステージにはニューカマーが現れるが、今年もっとも有名だったルーキーは、あの世界選手権モトクロス10冠の記録を持つステファン・エバーツだ。エバーツはマッティヒホーフェンのファクトリーチームから500EXCを駆り出してプロローグ3番手のタイムをたたき出した。他にもかつてのmotoGPレーサーであるユルゲン・ファン・デン・グールベルクが、300EXCで走り81位のタイムをマーク。ポールポジションは、オーストリアのモトクロス・スターであるオッシ・レイジンガー。プロローグはエルズベルグという祭のはじまりにふさわしいものとなった。
 本編のヘアスクランブルでの完走者は、今年は9人。例年よりもハードなコースとなったなかで、250EXCを駆るタディ・ブラツジアスクが5連覇を遂げた。また、日本の田中太一は300XCWで7参戦。昨年の13位を上回る7位を獲得した。
 優勝のブラジアスクは、なんと圧倒的なタイムの2時間12分3秒でのフィニッシュ。これに続いたのはトライアル世界選手権で7回チャンピオンに輝いているのドギー・ランプキン(GASGAS)。ランプキンはブラジアスクより6分遅れでゴール。その21分後、3位ジョニー・ウォーカー(KTM)がフィニッシュゲートをくぐった。田中太一は3時間14分48秒でのゴールである。
 なお、300EXCで出場した3位のウォーカーは、初参戦ながらの表彰台で、センセーショナルなデビューを飾った。4、6位には同じく300EXCでベン・ハミングウェイ、ダン・ハミングウェイと兄弟揃っての完走。田中太一のすぐ後ろ8位でのフィニッシュは、トライアルライダーのクリス・バーチ(300EXC)。最後の完走者9位には地元オーストリアのヒーロー、ラスル・エネックルが入った。世界で有数のラリーストであるシリル・デプレでさえも4時間というタイム設定をクリアできず、15位に終わっている。

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田中太一「昨年、プロローグでスピードが無かったので5列目スタートになってしまった反省を活かし、今回はアメリカのカート・キャッセリの元で1ヶ月修行を積んできました。その結果は出せたと思いますし、プロローグの順位を出せたことで僕としては80%くらい目標が達成できた気になったほどです。本編は非常に難しいコンディションでした。昨年のタイムは3時間37分、今年は3時間10分だったのですが、昨年は実質5列目スタートなので25分(1列スタートする度に5分ビハインドが設けられる)遅く出ています。だから、240台を抜いた昨年とタイムがほとんど変わらないことになってしまいますよね。それほど、難しかった。僕はどちらかというとフィジカルで攻めると言うよりは、勢いで足をつかずにセクションをクリアしていくようなタイプなので、今回のような「押し」の多いコースでは長所も活かしきれなかったですね。
タディ(・ブラジアツスク)や、(グラハム・)ジャービス達は、エクストリームエンデューロのスペシャリストとして、年間のほとんどを専用のトレーニングで費やせますが、僕は今のところそうはいかない。だから、トップ5に入るまではいけたとしても、それ以上を目指すのはまた違った体制が必要です。それをみんなが望むのなら、僕はそうしたいと思っています。
今季の残りは、トライアルのショーがメインになりますが、JEC、JNCCの両方の最終戦には参戦予定です。目標は、日本最速。そのためには、再度渡米して修行することだって惜しみはしませんよ」

いまだに、海外でも5列目スタートから完走は語りぐさなんです。現場にいくと、みんながそれを言ってくる。「あの5列目スタートのタナカサンは、どうだ、調子いいか?」と。今年もそう。でも、そろそろやめたいですよね、あのハードエンデューロスターの田中太一はどうだ、と。そんな日が来るのは、きっともうすぐそこに!

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