いよいよアジアクロスカントリーラリー(AXCR)のスタートが近づいてきました。

ラリーに初挑戦する宮崎が、ラリーに関するHOW TOを、小栗伸幸氏に訪ねてきました。小栗さんとはモトクロスIAライダーや、もちろんオグショー社長としてライテクやトランポのことなど様々な取材をさせていただきましたが、ラリーのことを具体的に取材したのは実は初めて。パリダカ、オーストラルアジアンサファリ、モンゴル、UAEなど多くの海外ラリー参戦経験を持つ小栗さんから、完走するための心構えを尋ねました。

以下、小栗さんの言葉から。

「僕は、仮に4日間のラリーならばこう教えているんだ。

1日目は捨てなさい。

2日目は慣れなさい。

3日目は慣れていたら、テストをいくつか攻めてもいい。でも基本は2日目と同じ。

4日目に、初めてアクセルを開けていい。

極端な話、全部のコマ図で停止してICOの距離調整をする、くらいの気持ちで確認してほしい。それを10個くらいやると余裕がでてくるから、停まるまでもないと思えてくる。SSでも同じだよ。日本の林道と違って、海外のダート天国のような所では、似た場所がたくさんある。どんなに速く走れても、道を間違えたら時間だけが過ぎていく。ガス欠でとまったり、リスクも大きいんだ。コマ図を作成する人のクセもあるし、途中でコマ図作成のための車を変更していると距離が変わってくる。だから毎日、スタートしてから3コマくらいは距離をしっかり見て、『今日も合っている』ことを確認したほうがいい。

ラリー開催を知るオフロード愛好家が事前に走り回ったワダチも多数あることがある。コマ図をしっかり確認していても、別の方向に進むワダチが何本もあったら、コマ図よりもそちらを信じてしまうこともありえる。僕は道を間違えないほうだけど、オーストラリアで1時間ほど潰したのが一番のミスかな。絶対にココだと信じて入った所が違っていて、方向転換したら方向が分からなくなってしまったんだ。タイヤ痕もつけたつもりだけど、あまりにも地面が固い。太陽も真上。完全に方向性を見失ったよ。慌てて動くとろくなことがない。だから僕はバイクをとめて、ヘルメットを脱いで、後続車の音をひたすら聞いた。音が聞こえるほうに近づき、音が聞こえなくなったらまた停まる。それを繰り返して、ようやくコースに戻れたんだ。戻ってからも距離を数箇所で合わせて、初めて確信して、スピードを再び出し始めた。そのくらい慎重でいい。

転んだら、僕は絶対に一服するよ。バイクを起こして、壊れていないか確認して、距離やルートを確認して…。エンジンを少しさまして再スタートする。(編集部注:1周の持ち時間が決まっているオンタイムエンデューロでは迅速なリカバリーが必要だけど、その意識を変えるべきなのだろう)。

2日やるとなんとなく見えてくるんだ。走り方も、自分の弱点もね。ゴールをした人だけが、『もう少し飛ばしていこう』とか言えるんだ。僕の考えでは、リタイアしてしまった人は、ラリーをやったとは言えず、明らかに自分の限界を超えてしまった人。だからビリっけつでもいい。焦らなくていい。コマ図と路面とICOとライディングが一致したら、SSとして取り組めばいいんだ。完走した後に『ゆっくり走りすぎたかな』と思っても、それは次のチャンスをもらったということ。それができない人がみんな消えてしまうんだよ。

僕も周りから遅過ぎと言われることが多いけど、初めての国の初めての路面を走るのに、遅すぎるということはないよね。慣れてきた後半から飛ばしはじめれば、どんどん前の方へ行ける。勝負はそこからだと思う。

大事なのは1日1回以上転ばないこと。1回の転倒で100kmの体力が奪われると思えばいいよ。ラリーのなかでバイクを操る要素は10個あるうちの1個でしかない。いち早く引き返す勇気や停止してでもリセットできるか、そういう判断能力が必要で、年齢を重ねても勝てる要素が多い。それを駆使するのがラリーの楽しさ。痛い想いをしている人ほど、準備も考え尽くされているんだ」

小栗氏のラリーマシンCRF250Xのハンドル周り。世界的に有名なMD製マップケースを装備する

小栗氏のラリーマシンCRF250Xのハンドル周り。世界的に有名なMD製マップケースを装備する。

ICOは2個つけるのが基本。距離を補正しながら進みます。ピンクマーキングはSS。小栗さんは塗り分けて識別しやすくしています。

ICOは2個つけるのが基本。距離を補正しながら進みます。ピンクマーキングはSS。小栗さんは塗り分けて識別しやすくしています。

長距離を走るためOGUShowオリジナルのシートクッションを搭載。サイドバッグ固定のためのベルクロもつく便利アイテム

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ガムテープの芯を抜いて、メーターに巻き付ける。

ガムテープの芯を抜いて、メーターに巻き付ける。

タイラップはフロントフォークに差し込んでおく

タイラップはフロントフォークに差し込んでおく。

電波腕時計は必需品。電波時計で進行することが多く、時間を正確に把握することで、日陰などで休息をしっかりとれる。不安で早く準備しすぎたりせずに済むと言う。

電波腕時計は必需品。電波時計で進行することが多く、時間を正確に把握することで、日陰などで休息をしっかりとれる。不安で早く準備しすぎたりせずに済むと言う。

小栗さんがラリーにこだわる気持ちは少しだけ分かった気がした。完走して、またラリーの話をさせていただきたいと思います。

小栗さんがラリーにこだわる気持ちは少しだけ分かった気がした。完走して、またラリーの話をさせていただきたいと思います。ありがとうございました!

 

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