また、大粒の雨が降って来た。
ひんやりとした空気を感じ、行き先に黒い雲の塊が見えたら、十中八九スコールに見舞われることになる。
リエゾンでもSSでもスコールに見舞われ、顔に痛い雨粒が突き刺さり、それでも意地でバイクを止めずにひた走っていると、いつの間にか雨は止んでいるのだ。
アジアクロスカントリーはその繰り返し。カラカラの土を走ったかと思えば、タイヤが半分埋まるくらいの泥もある。フロントが突き刺さりそうな白砂もあれば、頭蓋骨大のガレ場もある。
ウォーターベッドもあれば、水田のあぜ道もある。ジャングルもあれば、地平線が見える直線もある。
目まぐるしく変わる天候、路面を乗り切って行くと、安堵のゴールが待っている。
ホテルに戻れば、仲間達の笑顔がある。翌朝までにやらなければいけないことが山ほどある。
ラリーのコンペティターでしか味わないこの非日常に6年間浸って来た私は、来年の8月、どんな心境でいるのだろうか。
早朝に一台ずつスタートして行くバイクを見守りながら、自分も走り出したいという衝動に駆られたりしないだろうか。
ラリーの魅力を改めて思う。
一人で挑む時間。メーターとマップ、視界と自分のライディングが合わさったときは、快感指数が上がっている。
これがやめられないのだ。
気づくと息を吸わずに集中しているので、深呼吸をする。
まだ道中は長いのだ。
そして、みんなといる時間。偶然にも一緒にSSやリエゾンを走ることになった人との時間。
共に悩み、走り、飯を食い、笑いや焦り、疲れを共有することの贅沢さよ。
SSを走り終えてホテルに戻ってからの洗車の時間が、一番リラックスしているときかもしれない。
この後に整備などやることいっぱいあるのだけど、とりあえず、洗車してもらっている時間は何もやることがない。そんな時の写真を撮ってくれたのは、ラリーの友、小野さん。
ダートスポーツチームは3つのテントを共有したのだけど、毎年トラック輸送をしてくれるタイのスタッフ達が素晴らしい仕事をしてくれる。先回りして、僕らが帰還するときには、テントが建っているのだ。本当はチームの我々がやる仕事なのに。しかも荷物積載しているトラックの近くという、最高の状況を作ってくれる。朝の出立時は流石に我々がテントをたたんだけれど、本当に頭が下がる。
夜のパドックのマシンがある情景。
この静かで、それでいて翌日への活動を前に小休止しているような感じが好きだ。
実は四輪チームは深夜まで多くのチーム員やメカニックが煌煌と灯しながら、ガンガン整備をやっている。アジアのチームは歌謡曲やダンスナンバーをガンガン鳴らしている。
それとは対照的に、二輪はライダーが黙々と自分のマシンと向かい合っている。
ラリーは人生の縮図、と小栗伸幸さんは教えてくれた。
そして、人そのものの本当の姿が見える。
何が最高かって、いろいろな人のすごさがわかることだ。
二輪で初参加の西田さん。予定より一年早く参戦したこともあり、チーム内でもダートバイクキャリアは圧倒的に少なく、体力も自信がないという。
しかし! 日を追うごとに目が輝き出し、楽しくて仕方ない感じがにじみ出るというより、ほとばしっているではないか!
実は全行程終わって翌朝帰るという疲労が重なったとき、西田さんの「マンペンライ!」の言葉が沁みた。
今回ダートスポーツチーム、皆さんの底力のようなものをバンバン感じられた。
こういう遊びを真剣に楽しめる人は、きっといろいろな局面もマンペンライで乗り切るんじゃないだろうか。
一方、私はと言えば、それとは真逆の一面もあり、厳しい状況になると顔に出てしまう小心者でもある。
でも、「どんなことでも、どうにかなる」。それだけは、ラリーに出てみて分かったのは確か。
止まない雨はないのだ。
きっとまた、走り終えたバイクを眺めながら、飯を食い、体を休めるような至極の時間が欲しくなるに違いない。
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